見えないものを見るために

人生哲学 元図書館司書 図書館・情報学

仕事にやりがいはいらなかった

仕事に「やりがい」はいらなかった。

新卒から早8年が経過した。今まで派遣から正社員までそれなりの働き方を経験してきた。私が新卒で就職活動していた時は「やりがい」のある仕事を選ぶのが良いと言われた。

好きを仕事にする

そんなポジティブな価値観が良しとされていた。当時、第二就職氷河期真っ只。東日本大震災の爪痕が残る中、市場では内定取消や内定控えが横行していた。そんな中でも、私は自分が好きで、学んできたことを生かせる仕事に内定を得ることができた。待遇は低かったが、やりがいのある仕事なら続けられると思ったのだった。

やりがい搾取の日々

仕事は辛いが楽しかった。憧れていた業界、スピード感、次から次へと新しいことが起こる刺激的な世界。あっという間に1日が過ぎていった。
あの仕事にやりがいは、確かにあった。
しかし、給料は大卒でも月給18万円程度だった。ボーナスなし、有給事実上なし、福利厚生なし、休みは年間100日を切った。朝8時から仕事が始まって、夜9時まで帰れない。毎日13時間拘束。それだけ働いても年収は250万円。おまけに昇給しても管理職で年収300万円程度しかいかないという事実も後に知ったのだった。

やりがいはある。やりがいはあるが…豊かにはなれなかった…。

今の仕事にやりがいはない

あの日々から三年が経つ。私は大企業に転職した。断言すると、今の仕事にやりがいはない。けれども、待遇は格段に上がったし、自分の時間も増えた。嬉しかったのはメンタルが安定していること。前職では、やりがいはあっても次から次へと降ってくるタスクや不安定な人間関係から体調を崩すことも多かった。今はとても精神的に安定している。おかげで貯蓄や投資も捗っている。はっぴーである。

そこでこの疑問がでてくる。

仕事にやりがいは必要なのか?

私の答えは、やりがいよりも働きやすさが大事。市場では未だに「好きを仕事に!」「やりがい!」といった綺麗事が並べられている。そりゃやりがいがあった方がより捗るよ。パーフェクトな仕事があれば苦労しない。実際そんな仕事はないよ。
私は、ダメでも働きやすければ、自然とやる気に繋がるもんだなと感じたりもする。
やりがいを盾に労働者をこき使う輩がたくさんいるわけだから、「それは搾取じゃないのだろうか?」と、考えることは大切だ。特に熱中している間は、それが本当に実りある世界なのか見極めることができなくなってしまう。

「置かれた場所で咲きなさい」

こんな無責任な言葉がヒットした時期もあったようだが、本当にその場所で腐らずに咲けるのか、しなさいと言った人は責任をとれるのか? いや、とってはくれない。何も知らずに「ゆでがえる」になっては遅いのだ。