見えないものを見るために

人生哲学 元図書館司書 図書館・情報学

【最速感想】映画「21世紀の資本」

21世紀の資本の映画版を見てきた。場所は新宿シネマカリテ。大手チェーンの映画館では今のところ上映しておらず、原作本は話題作であるのに、映画のこじんまりさを感じる。

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内容は「資本主義の歴史」といった感じ。歴史映画のワンシーンを使いながら、ピケティや大学教授、経済学者が解説をする流れ。

共産主義の失敗、資本主義の限界、そして、もたらされた格差と争い。かつて貴族と庶民の対立だった資本の獲得競争は、資本家と労働者、先進国と新興国、国家と多国籍企業と変化していく。いずれは人間とAIの対立になるのでは?と、予期させつつ映画は幕を閉じる。

以下は箇条書き感想。

・盛者必衰の理というか、大英帝国はめちゃくちゃに侵略や略奪を繰り返してきた悪じゃないか。植民地支配ね。今はイギリスも多国籍になってしまったので、2番目に多い名字が中華系らしい。フランスも貴族やら資本家やらの搾取がひどい。欧州諸国は今は何食わぬ顔ですかしているけれど、やることやってきましたよね、という野蛮さを感じた。


・日本の描写は少ない。終戦直後のボロボロの日本と、自動車産業で成功した日本(今はそうでもない描写あり)ぐらい。代わりに強調されたのは、中国である。いかに米国にとって中国の存在が脅威であるかがわかる。いずれ世界一の経済大国になるのは中国だとすら言っている。しかし、中国国内は広く、超経済格差があるし、少子高齢化も急速に進んでいる。アメリカを一時的に抜くことはあっても、第一位に君臨し続けることはないだろう。むしろインドがこれから伸びると言われているのに、出てこないのは何故。ひたすらに推されるのは中国ばかりであった。


・これからはどこに課税するのかが問題になる。大企業の内部留保やら、一部の資本家の富の独占やら。日本では主に年収=flowの累進課税が行われているが、いずれ資産=stockに課税がされるのでは?
既にメガバンクが預金に手数料を取るか検討されているようだし。高齢者も溜め込み層と貧困層が両極端なのに、どちらも同じもしくは貧乏な自営業者より、リッチな元勤め人や主婦に多い年金が支給される状況である。三分の二の若者は親より貧しくなるのに、親世代より高課税を負担する矛盾。
映画中に高課税と再分配は時代遅れというセリフがあり衝撃だった。多国籍企業タックスヘイブンは許すなといいながら、税制度は時代遅れという謎よ。


・結局、誰か悪者を作らないと連帯できない悲しみがあった。ドイツの敵は英仏(他罰的)→ナショナリズム発展→ヒトラーの台頭の流れを見て。今だと欧州の敵は移民になるのだろう。
環境が悪い、社会が悪いと他のせいにして一致団結する構図を知った。(労働組合もそうなんだろう)


多くの資本を一部の金持ちが独占する。格差は拡大している。この辺については理解した。ただ、その先というか、「今の技術なら格差をなくし、平等にすることができる」と言い放つピケティの真意がわからなかった。どないすんのや。

たぶん「相続への課税強化」、「多国籍企業の売上額に応じた国家による課税」、「資本への課税」と、政府(国税)の介入というか、資本の没収を推進しようみたいなことなのだろうか。

映画というよりは、解説動画だった。

しかし、雑貨屋の娘から首相にまでなったサッチャーってすごかったんだな。